こんにちは!とらです。 今回は、前回に引き続き、「ザ・ゴール」の続編、「ザ・ゴール2」です。イスラエルのエリヤフ・ゴールドラット著の作品。
前作で、工場閉鎖の危機を救った日々から、10年の年月が経ちます。副社長に昇進したアレックスが会社の経営やマネジメントしていくうえで、前作からのTOC理論を広げていく。そんな作品になっています。
『ザ・ゴール2』(原題:The Goal 2: It’s Not Luck)は、エリヤフ・ゴールドラットによって書かれたビジネス小説の続編で、前作で導入された制約理論(Theory of Constraints, TOC)のさらなる応用と、思考プロセス(Thinking Processes)について詳しく説明しています。この作品では、アレックス・ロゴのその後のキャリアと新たな挑戦が描かれます。
主な登場人物
- アレックス・ロゴ: 前作に続き、ユニコ社の工場長から昇進して経営の上層部で活躍する。
- ジョナ: アレックスのメンターであり、制約理論の専門家。
- ビル・ピーチ: アレックスの上司であり、ユニコ社の社長。
「ザ・ゴール2」のあらすじ
アレックス・ロゴはユニコ社の工場の業績改善に成功し、現在はユニコ社の複数の事業部門を管理しています。しかし、今度は異なる問題に直面します。ユニコ社の複数の部門が依然として経営不振に陥っており、アレックスはこれらの部門を再建する責任を負います。
思考プロセス
『ザ・ゴール2』では、制約理論の基本的な考え方をさらに発展させ、問題解決のための思考プロセスが紹介されます。これには、以下のステップが含まれます:
- 現状の把握(Current Reality Tree, CRT): 問題の根本原因を特定するためのツール。
- 未来のビジョン(Future Reality Tree, FRT): 望ましい結果を達成するための計画。
- 移行のプランニング(Transition Tree, TT): 現状から未来のビジョンに至るためのステップを具体化する。
- 前提条件の確認(Prerequisite Tree, PRT): 目標達成に必要な前提条件を洗い出す。
- 対立の解消(Evaporating Cloud, EC): 相反する要求や目標を調整し、解決策を見出す。
アレックスの今回の課題は、3つのグループ会社の業績を立ち直らせること。前作の工場での生産管理のマネジメントから、マーケティング、経営管理のマネジメントへと物語はシフトしていきます。
そのマネジメントに使用されるのがTOC(theory of constraints 制約条件の理論)です。前作で紹介された、「全体のスループット(生産量)は、ボトルネックの能力で決定される」という理論です。ゆえに、ボトルネックの能力を最適化することが重要である、ということですね。
この作品の中では、TOCから思考プロセスを物語の中で学べるようになっています。if then~ 「もし、~ならば、~である」をもとに、問題に対して論理的に解決策を見出していく方法です。
非常にわかりやすい事例が挙げられており、アレックスの子供たちが抱えている問題すらも、論理的に解決する方法が載せられています。感情に任せて解決するのではなく、対人ではなく、対問題として捉えていく。考え方を学びました。
アレックスは思考プロセスを活用して、ユニコ社の複数の部門が直面する経営課題を分析し、各部門の問題の根本原因を特定します。そして、これらの問題を解決するための戦略を策定し、実行に移します。
思考プロセスとは
この作品のポイントは、思考プロセスです。今向かっているゴールを達成するうえでの、「好ましくない事案」を洗い出し、その中でのコアを見つけ出します。コアが見つかったらその問題を何に変化させるかを考え、そして、どのように変えるかを考えます。
思考プロセス(Thinking Processes)は、エリヤフ・ゴールドラットが制約理論(Theory of Constraints, TOC)を実践するために開発した一連のツールと方法論です。
これらのプロセスは、複雑な問題を整理し、解決策を見つけ出すための体系的なアプローチを提供します。以下に、それぞれの思考プロセスを詳しく説明します。
1. 現状の把握ツリー(Current Reality Tree, CRT)
現状の把握ツリーは、現時点での問題の全体像を把握し、その根本原因を特定するためのツールです。以下のステップで構成されます:
- 重要な問題のリストアップ: 現在直面している問題を洗い出します。
- 問題間の因果関係の特定: 各問題がどのように関連しているかを示す因果関係を図にします。
- 根本原因の特定: 図の最下部に位置する問題が最も根本的な原因である可能性が高いため、それを特定します。
2. 未来のビジョンツリー(Future Reality Tree, FRT)
未来のビジョンツリーは、理想的な未来の状態を描き、それを達成するための必要な条件を明確にするツールです。
- 望ましい結果のリストアップ: 目指すべき理想的な状態や成果を列挙します。
- 因果関係の構築: それぞれの結果を達成するために必要な条件や行動を因果関係でつなぎます。
- 整合性の確認: 全体の整合性を確認し、現実的かどうかを評価します。
3. 移行のプランニングツリー(Transition Tree, TT)
移行のプランニングツリーは、現状から未来のビジョンへ移行するための具体的なステップを計画するツールです。
- 現在の状態からスタート: 現在の問題や状況から出発します。
- 具体的な行動の特定: 未来のビジョンに到達するための具体的な行動や変更を特定します。
- ステップの順序付け: 行動の順序を決定し、各ステップがどのように連鎖しているかを示します。
4. 前提条件ツリー(Prerequisite Tree, PRT)
前提条件ツリーは、目標を達成するために必要な前提条件を明確にするツールです。
- 目標の明確化: 達成したい目標を明確にします。
- 前提条件の特定: その目標を達成するために必要な前提条件を洗い出します。
- 因果関係の構築: 各前提条件がどのように目標達成に寄与するかを因果関係で示します。
5. 対立解消図(Evaporating Cloud, EC)
対立解消図は、相反する要求や目標を調整し、両方を満たす解決策を見出すためのツールです。
- 対立する要求の特定: 相反する要求や目標を特定します。
- 共通の目標の確認: 双方が共有する上位目標や共通の利益を確認します。
- 妥協案の模索: 両方の要求を満たすための解決策や妥協案を考案します。
この過程は、本を読んでいただければ早いですが、日々、追われている問題に対し、こんがらがった糸が解けていく感覚を覚えました。対、問題に対しての心構えが大分変りました。
これらの思考プロセスを組み合わせて使用することで、企業や組織は複雑な問題を体系的に分析し、根本的な解決策を見つけ出すことができます。
思考プロセスは、現状の把握から始まり、理想的な未来のビジョンの策定、具体的な移行プランの作成、前提条件の確認、そして対立解消までを網羅しています。これにより、持続可能な改善と成長を実現するための包括的なアプローチが提供されます。
結果
アレックスの指導のもと、ユニコ社の各部門は次第に業績を改善し、会社全体が持続可能な成長を遂げます。アレックス自身も、経営者としてのスキルをさらに磨き、より広範な視野で企業経営に貢献するようになります。
『ザ・ゴール2』は、制約理論の応用と問題解決のための思考プロセスを具体的に示し、企業の複雑な経営課題に取り組む方法を提供します。
前作に引き続き、ビジネスマンや経営者にとって非常に実践的で有益な教訓を多く含んでいます。
まとめ
この作品を受けて、日々の問題に対する方法が大きく変わりました。問題に対して、俯瞰で捉えることの重要さは、おそらく、皆さんが理解できていることだと思うのですが、その思考プロセスを体感的に学べる本というと、なかなか見つかりませんでした。
この物語は舞台がアメリカの企業であり、M&Aからの経営難という、身近かと言えばそんなこともない内容から入るのですが、ポイントはそこではなく、上記したような普段の生活の中での思考プロセスの重要性を教えてくれる点です。
正直、かなりのボリュームですが(笑)、
皆様にも1度は読んでいただき、感想をお伺いしたい本です。おススメです。
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